ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―銀行で投資する人って、投資の勉強してますか?(前編)

2012-09-14

 いきなり挑発的なタイトルでお気を悪くされた方、申し訳ございません。投資をしている仲間として、銀行で投資をされている方、これから銀行で投資を始めようとお考えの方を、本気で心配しております。ひとこと申しあげさせてください。

 1998年の銀行での投資信託販売解禁以降、銀行での投資信託販売は中高年層を中心に大きく伸びてきました。直近の2012年7月末では、銀行窓販残高は前月比0.6%増の43兆円、シェアは49.6%にも及んでいます(投信協会調べ)。投資信託の実に半分は、銀行窓口で販売された計算になります。

 しかしながら、本当に、銀行窓口の投資信託はそれほど素晴らしいものでしょうか。
 実は、大方のイメージと違い、「銀行窓口には検討に値する投資信託がない」というのが実態です。それをこれからご覧いただきます。

 そのためにはまず、投資信託は、「販売手数料」(投資信託を購入する時にかかる手数料)が金融機関によって違うという事実を知る必要があります。実例を見てみましょう。(手数料データは販売会社WEBサイトより。2012年9月5日現在)

【事例1】 「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の場合

 主に外国債券に投資する投資信託です。主に中高年層に人気で、現在、日本の投資信託で最も純資産が大きな投資信託でもあります。この投資信託を銀行で購入された方も多いのではないでしょうか。その販売手数料の違いを見てみましょう。

三井住友銀行: 販売手数料 1億円未満1.575%、1億円以上  1.05%
SBI証券: 販売手数料 なし

 仮に500万円分、この投資信託を購入するとします。三井住友銀行で購入すると、販売手数料として7万8750円も取られてしまいます。一方、SBI証券で購入すれば、販売手数料は0円です。
 販売手数料は、払っても払わなくても、その後の運用成績には一切関係がありません。投資家にとっては単なる損(金融機関の利益)なので、できるだけ少ない方がよいものです。
 三井住友銀行で購入しなくてはいけない経済的合理性は、どこにあるのでしょうか?

【事例2】 「ニッセイ日本インカムオープン」の場合

 こちらは日本債券に投資する投資信託です。昨今、金融機関は「通貨選択型」と呼ばれる為替リスクを含むハイリスクな投資信託を積極的に販売していますが、その一方で、「為替リスクを負いたくない方はこちらを」というセールストークで、この日本債券投資信託を、あまりリスクを好まない投資家に販売しているようです。

三菱東京UFJ銀行: 販売手数料 1億円未満 1.05%、1億円以上 0.525%
楽天証券: 販売手数料 なし

 仮に500万円分、この投資信託を購入するとします。三菱東京UFJ銀行だと販売手数料5万2500円、楽天証券だと販売手数料0円です。
 もしあなたがリスクを好まない投資家であるなら、金融機関から無用に高い手数料を取られるリスクにも、もっと敏感になってほしいところです。
 三菱東京UFJ銀行で購入しなくてはいけない経済的合理性は、どこにあるのでしょうか?

【事例3】 「MHAM株式インデックスファンド225」の場合

 続いて、日本株式に投資するインデックスファンドです。インデックスファンドは低い運用コスト(信託報酬)が売りですが、販売手数料も低いに越したことはありません。

みずほ銀行: 販売手数料 1億円未満 1.05%、1億円以上 0.525%
楽天証券: 販売手数料 なし

 仮に500万円分、この投資信託を購入するとします。みずほ銀行だと販売手数料5万2500円、楽天証券だと販売手数料0円です。
 みずほ銀行で購入しなくてはいけない経済的合理性は、どこにあるのでしょうか?

【事例4】 「SMT グローバル株式インデックス・オープン」の場合

 続いて、外国株式に投資するインデックスファンドです。

りそな銀行: 販売手数料 5000万円未満 2.1%、5000万円以上1億円未満 1.05%、1億円以上3億円未満 0.525%、3億円以上 なし
マネックス証券: 販売手数料 なし

 仮に500万円分、この投資信託を購入するとします。りそな銀行だと販売手数料10万5000円、マネックス証券だと販売手数料0円です。
 事例3・4にもあったように、今やインデックスファンドは、販売手数料なし(ノーロード)が当たり前の時代になっています。インデックスファンドの販売手数料を取る金融機関は問題外と割り切ってしまいましょう。
 りそな銀行で購入しなくてはいけない経済的合理性は、どこにあるのでしょうか?

【事例5】 「ワールド・リート・オープン」の場合

 しつこいようですが、最後に「こんなこともあるの!?」という事例をご紹介します。外国のREIT(不動産投信)に投資する投資信託ですが、以下の金融機関に注目です。

三菱東京UFJ銀行: 販売手数料 1000万円未満 2.625%、1000万円以上1億円未満 2.1%、1億円以上 1.05%
カブドットコム証券: 販売手数料 なし

 三菱東京UFJ銀行の販売手数料2.625%というのは、今までの事例で最も高い販売手数料ですが、カブドットコム証券ではゼロです。そして、実は三菱東京UFJ銀行とカブドットコム証券はともに、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)という企業グループの一員です。
 同じ企業グループ内の金融機関でさえ、投資信託の販売手数料は大きく違うのです。

 さて、販売手数料の観点から、銀行窓販で投資信託を購入することの非合理性を説明してきました。
 上記はあくまで一例であり、良心的な投資信託を提供している銀行窓口もごく一部なくはないのですが、私を含め、投資が仕事でも趣味でもないふつうの人にとって、ほとんどの銀行窓口には検討に値する投資信託がないと考えるくらいで丁度よいのが現実でしょう。

 「そんなこと言っても、自分ではどの投資信託を選べばいいかわからない。銀行窓口なら相談できるし丁寧に教えてくれるじゃないか」

 そう思われるかたもいらっしゃるかもしれません。たしかに、銀行の窓口では相談ができます。しかしながら、実は、ここにも銀行で投資してはいけない重大な落とし穴が隠されています。それはまた別の機会に。

※インデックス投資の具体的方法が知りたいかたは、こちらの記事にまとめてあります。ご興味があればどうぞ。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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