ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―銀行で投資する人って、投資の勉強してますか?(中編:銀行窓口で投資相談をしてはいけない3つの理由)

2012-09-28

 挑発的なタイトルでお気を悪くされた方、申し訳ございません。投資をしている仲間として、銀行で投資をされている方、これから銀行で投資を始めようとお考えの方を、本気で心配しております。ひとこと申しあげさせてください。

 前回の記事では、販売手数料の観点から、銀行窓販で投資信託を購入することの非合理性を説明してきました。
 「そんなこと言っても、自分ではどの投資信託を選べばいいかわからない。銀行窓口なら相談できるし丁寧に教えてくれるじゃないか」
 そう思われるかたもいらっしゃるかもしれません。たしかに、銀行の窓口では相談ができます。しかしながら、実は、ここにも銀行で投資してはいけない重大な落とし穴が隠されています。

なぜ、銀行窓口で投資相談してはいけないのか?

 結論から言えば、相談相手の銀行は、金融商品のセールスマンとして手ごわすぎるのです。これはべつに銀行のセールスマンが他の金融機関と比べて特別優秀だというわけではありません。銀行のある特権によるものです。

 その特権とは、銀行(メインバンク)が、あなたのお金の出入りをすべて把握していることです。具体的には、給料・ボーナス・退職金などの収入、そして、水道光熱費やクレジットカード利用額の引き落としの金額などを把握しています。
 「それがどうした?」と思われるかもしれませんが、銀行が把握しているお金の出入りの情報は、実は金融商品をセールスする側にとって喉から手が出るほど欲しい顧客情報なのです。ではなぜ、お金の出入り情報を持っているセールスマンが強力なのでしょうか?

(1)「今、お金がないから」という断り方ができないから

 お金の出入りの情報を知っていれば、銀行は私たちの口座にお金が豊富にある時に、金融商品のセールスができます。例えば、ボーナスが出た時や、退職金が振り込まれた直後などです。人は誰でも、ふところに余裕がある時には気持ちも大きくなってしまいがちです。
 さらに、その際私たちは、「今、お金がないから」という「常とう句」でセールスを断ることができません。口座にお金があることがバレているためです。

(2)最も簡単なリスク軽減策が消されてしまうから

 投資のリスクを減らす、最も簡単な方法をご存知でしょうか?
 投資対象を分散すること?惜しい。それもリスクを軽減する有効な方法ですが、もっとシンプルで確実な方法があります。それは、「投資金額を抑えること」です。当たり前すぎて、投資のテキストにはあまり書かれていませんが、投資の実践者は皆知っている重要なポイントです。

 銀行は余裕資金の全額を知っているため、言葉巧みに全額を投資させるよう話を持っていくことができます。全額を投資せず、投資金額を抑えるというリスク軽減策が消されてしまうのです。

 上記(1)(2)が銀行のセールスマンが手ごわすぎる理由ですが、他にも、銀行窓口で相談しない方がよい理由があります。

(3)窓口とネットバンキングで販売している商品が違うから

 同じ銀行でも、窓口とネットバンキング(インターネットによる取引)で、取り扱っている商品が違うことがあります。よくあるのは、ネットバンキングでは比較的低コストな投資信託を取り揃えているのに、それらは「ネット専用」で、窓口では購入できないというケースです。

 私たちが銀行窓口のセールスマンに相談をするのは無料ですが、銀行にとってみればセールスマンに高い人件費がかかっています。銀行はこのコストをどこかで回収しなければいけません。ならば、窓口販売で相談に乗りながら販売する投資信託からは、相応の手数料を取らなければ、という発想なのでしょう。必然的に、銀行窓口で購入できるのはたっぷりと手数料の乗った投資信託ばかりということになりがちです。

 以上の理由から、合理的な投資をしようと考える個人投資家は、銀行窓口で投資相談するのはやめた方がよいと思われます。

知っておくべき、投資家と金融機関の利益相反

 これは銀行に限りませんが、そもそも金融機関は、利幅が大きい商品を積極的に販売しようとします。彼らが第一に考えることは、金融機関が儲けることであり、私たち投資家を儲けさせることではありません。金融機関も慈善事業ではなく、ビジネスなのでこれは当然のことです。

 本当に良い商品は、えてして金融機関があまり儲からない商品であり、窓口には置いていないか、あっても奥の方にしまい込まれています。私たちはそういう商品こそ、自力で見つけ出さなければなりません。相談すれば良い商品を親切に教えてくれるだろうというのは、金融機関に対する過剰期待です。

 金融商品は一度購入してしまえば、その価格変動リスクはすべて私たち投資家が負います。金融機関側は私たちが儲かろうが損しようが関係なく、手数料が入る構造になっています。私たちはこの基本的構造をしっかりと認識し、金融商品の選択について、もっと注意深くなる必要があります。

では、どうすればよいのか?

 銀行窓口で相談できないのなら、どうすればよいのか?
 自分で勉強するのです。100万円の投資信託を買うのに、3.15%の販売手数料を払ったら、3万円を超えます。3万円あれば10冊以上の本が買えます。投資の名著を10冊以上読めば、もう銀行窓口に相談する必要はなくなるうえに、その後の人生に大きく役立ちます。
 それでも、どうしても誰かに相談したいのであれば、金融機関とのしがらみがない独立系のFP(ファイナンシャル・プランナー)に有料で相談することです。

 なお、例外的に、相談に訪れた顧客のニーズをきちんとヒアリングして、適切かつ極力低コストな商品の提案をしている銀行窓口もないとは言えません。しかし、大局的には、そのような希少な優良窓口(相談員)を探すという雲をつかむような努力をするよりも、自分で勉強してよいと考える商品をネット証券で購入する方が、ずっと効率的です。

※どんな本で何を勉強すればよいか知りたいかたは、ひとつの無難な方法をこちらの記事にまとめてあります。ご興味があればどうぞ。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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