ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―銀行で投資する人って、投資の勉強してますか?(後編:ある団塊世代投資家からのメッセージ)

2012-10-12

 挑発的なタイトルでお気を悪くされた方、申し訳ございません。投資をしている仲間として、銀行で投資をされている方、これから銀行で投資を始めようとお考えの方を、本気で心配しております。ひとこと申しあげさせてください。

銀行の感情マーケティング

 前編中編のコラムで、手数料の高さやセールスの手強さの観点から、銀行窓口で投資信託を購入することの非合理性を説明してきました。しかし、たとえ理屈の上では分かっていても、人は感情でも納得しないと、なかなか行動を変えません。むしろ、感情に従う人の方が多いかもしれません。

 その点、銀行は私たち顧客の感情を捉える術に長けています。
 たとえば銀行は、私たちがフトコロに余裕があると一時的に気が大きくなってしまうことを知っています。だから、口座に給与やボーナスが振り込まれた直後にセールスをかけるのです。

 そして銀行は、私たちが異性からほめられると嬉しくなってしまうことを知っています。だから、男性客には女性の担当者を、女性客には男性の担当者をつけてセールスするのです。

 さらに銀行は、個人資産の大半を保有する高齢者層が、ふだん孤独を感じていることを知っています。だから、高齢客の話をうんうんと家族よりもよく聞いてくれるのです。もちろん、気分が良くなった後にはセールスが待っているのですが……。
 銀行にはこれらの「感情マーケティング」を実現できる情報と仕組みがあります。

求められる「自分の行動」、やってしまうのは「他人に丸投げ」

 投資に限らず、なにか物事をうまく進めようと思ったら、少なからず調べたり、比較したり、検討したりする「自分の行動」が必要になってきます。そこは省略できるプロセスではありません。しかし、こと投資の話になると、「行動」のプロセスを放り出し、勧められるがまま「他人に丸投げ」してしまう方が後を絶ちません。

 1998年の銀行での投資信託販売解禁以降、銀行での投資信託販売は中高年層を中心に大きく伸び、現在では、投資信託残高における銀行窓販のシェアはおよそ5割にも及んでいます(2012年8月末、投信協会調べ)。

 前編、中編でお伝えしたように、少し調べればすぐに非合理的だと分かるのに、銀行窓販がこれだけ伸びてきたということは、それだけ「少し調べもしない」方が多いという証左と言えるかもしれません。

 私は日本の中高年層が、特別に怠惰で面倒くさがりだとは考えていません。むしろ、その逆だと思っています。特に、仕事に関しては世界的でも稀(まれ)なほど勤勉です。ただ、投資に関しては、他人に丸投げしてしまう悪い癖があるだけだと思っています。

ある団塊世代投資家からのメッセージ

 投資に関するこの悪い癖を直して、合理的に資産を運用してほしいということを、同じ個人投資家としてどうお伝えすればよいのか……と悩んでいたところ、読者の方からメッセージが寄せられました。もしかしたら、私などがべらべら喋るよりも、これをご覧いただくのがいちばんよいかもしれないと思ったので、ご紹介します。

 よく調査されて記事にしましたね。感服!
 確かにそうなんです。手数料の違いはどうしょうもありません。小生、訳の分からない時、最初の1本だけ銀行で買い入れました。その後は大手、準大手証券会社から購入しております。ほぼ購入し終わってからネット証券の手数料がノーロードまたは安いということを知って悔しかったのですが、よくよく調べてみると、小生が購入したファンドのほとんどがネット証券で扱っていない商品だったので納得できました。

 我々の年代(団塊)以上の人たちは、ネットを使えといっても無理な人は無理なんです。人に聞けといっても、それすら面倒がって聞かないのです。この気持ち、私には分かります。ある程度の年代にならないと理解できないのかも知れません。

 つまり、銀行が手っ取り早いのです。要は手数料が高くても、金融商品に関して勉強しなくてもよいという楽さ加減の方を選んでしまうのです。たとえネット証券が安いと分かっていても、銀行にその商品あれば少々手数料を払ってもかまわないと大半の人は思っているのです。そういう年代だと私は思っています。反面、元本割れなどが生じると、先頭に立って文句を言うのもこの年代かも知れませんね。

 ただ、いつまでも高い手数料を維持するのは難しいと思います。団塊世代までは何とか銀行も潤うでしょうが、それ以降の年代になると、水瀬さんのおっしゃるような考え方の人が大半になり、銀行自体がその対応を迫られるでしょう。・・・と思っています。

 この方はしっかりと合理的な資産運用をされているのですが、メッセージには、「手数料が高くても、勉強しなくてもよいという楽さを選んでしまう」という本音と、同時に、「いつまでもこういう考え方が主流ではないでしょう」という見通しが述べられていました。もし、同じ団塊世代のみなさんがご覧になっていたら、どう思われたでしょうか。それでも銀行で投資を始めますか?
 最後に、僭越(せんえつ)ながら私から応援メッセージを述べさせていただき、終わりたいと思います。

団塊世代のみなさまへ

 日本という国がここまで発展できたのは、あなたがたのおかげです。
 あなたは、会社のために、あれだけ長い時間仕事をしてきたではありませんか。
 あなたは、会社のために、あれだけ難しい課題を解決してきたではありませんか。
 あなたは、会社のために、あれだけコスト削減に取り組んできたではありませんか。
 その1%でいいので努力してみてもいいではないですか。今度は、自分のために。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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