ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―なぜ、インデックス投資はマイナーなのか(中編:市場・業界の要因)

2012-11-09

 前回の記事で、「インデックス投資」がプロ(機関投資家)の間ではメジャーであると書きました。しかし、個人投資家の間では、“超”がつくほどマイナーです。下記のグラフを見てください。

国内のパッシブファンドの純資産額とシェアの推移

国内のパッシブファンドの純資産額とシェアの推移

 国内の投資信託全体に占めるパッシブファンド(=インデックスファンド)の比率は1割以下です。しかも、その比率は下降トレンドです。なぜ、こんなにマイナーなのでしょうか?

インデックスファンドができてまだ間もないから

 世界初のインデックスファンド「バンガード500インデックス・ファンド」は、米国で1975年に誕生しました。日本では、米国に遅れること10年、1985年にようやく日本初のインデックスファンド「インデックス・ポートフォリオ・ファンド」が誕生しました。
 その後もインデックスファンドは設定されましたが、主に日経平均やTOPIXといった日本株式のインデックスファンドばかりでした。外国株式、外国債券、日本債券など基本的資産クラスがそろい始めたのは比較的最近になってからで、日本国内において確定拠出年金制度が導入された2001年以降にようやく活発化してきました。

 現在が2012年ですから、個人投資家がひととおりの資産クラスのインデックスファンドに投資できるようになってから、まだ10年そこそこの歴史しかありません。100年以上の歴史がある株式や、50年以上の歴史がある投資信託(アクティブファンド)と比べて、インデックスファンドは新参者です。

 そりゃあ、インデックス投資がまだまだマイナーでも不思議はありません。

バブル崩壊後20年以上、日本株式インデックスが下落し続けたから

 上記のとおり、できて間もないインデックスファンドですが、日本株式インデックスだけは、20年以上の歴史があります。しかし、その日本株式インデックスが、バブル崩壊以降、1989年をピークに、20年以上下落し続けていることは、「失われた20年」という言葉とともにご承知のことと思います。

 20年前から日本株式インデックスファンド(だけ)に投資していた個人投資家は、みんな大損したはずです。その間、皮肉なことに他の資産クラス(外国株式・外国債券・国内債券)は比較的堅調であったわけですが、そこに投資するまともなインデックスファンドは、当時ほぼ存在しなかったわけです。存在した日本株式インデックスファンドでインデックス投資をやってみようと志した投資家は、みな損をしました。人によっては「インデックス投資、うらめしや…」かもしれません。

 そりゃあ、インデックス投資がマイナーでも不思議はありません。

コストが安く金融業界側が儲からないから

 一般に、インデックスファンドは、アクティブファンドよりも信託報酬が安いです。ちなみに、日本株式ファンドの信託報酬の平均を比較すると、インデックスファンド年率0.6%程度に対して、アクティブファンドは年率1.4%と倍以上の開きがあります(2012年2月末現在)。

 金融業界側としては、インデックスファンドは販売しても利幅が薄い商品ということになりますので、いきおい、利幅が厚いアクティブファンドの販売にいそしむということになります。
 それに加えて、前回の記事で指摘させていただいたように、機関投資家の間ではかつて「インデックス運用ブーム」が起こり、コスト競争が激化し運用報酬が下がるところまで下がりきってしまいました。金融業界としては、個人投資家向けの投資信託でたくさんの手数料を稼がなければならない懐事情なのでしょう。

 そりゃあ、インデックス投資もマイナーに追いやられてしまうでしょう。

金融業界の多くの仕事が不要になってしまうから

 インデックス投資が最も効率的と帰結する「現代ポートフォリオ理論」によれば、株価の動きはランダムであり、「将来の株価予測はいっさい役に立たない」ことになっています。

 これが本当に正しいかどうかは別として、現代ポートフォリオ理論がサポートするインデックス投資を追及していくと、金融業界の多くの仕事、例えばアナリスト、エコノミスト、ストラテジストなどは、すべて不要という結論にたどり着いてしまいます。また、投資アドバイザー、情報提供サービス会社、出版社、イベント会社などの周辺業界の仕事も、大きなダメージを受けることになるでしょう。

 金融業界にお勤めの皆さんは、仕事の存在意義に関わる、もっと言ったら、自分たちの生活がかかっているわけですから、これは面白くありません。場面、場面で、個人投資家の目をできるだけインデックス投資からそらそうとするとする気持ちが働いたとしてもまったく不思議ではありません。

 そりゃあ、インデックス投資もマイナーに追いやられてしまうでしょう。

 もちろんこれら以外にも「市場・業界の要因」はあるかと思いますが、上記の4点が大きいのではないかと見ています。なお、金融業界にお勤めのかたにとって、一部不愉快な表現がありましたことをお詫びいたします。
 次回は、「投資家の要因」について考えてみたいと思います。

(次回に続く)

※インデックス投資の具体的方法が知りたいかたは、こちらの記事にまとめてあります(無料)。ご興味があればご覧ください。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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