ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―なぜ、インデックス投資はマイナーなのか(後編:投資家の要因)

2012-11-30

 このシリーズ記事の前編で、インデックス投資はマイナーですが、実はプロ(機関投資家)の間ではメジャーであると書きました。中編で、個人投資家の間でだけマイナーな理由を、市場・業界の要因から見てみました。今回は、マイナーな理由を投資家の要因から見てみたいと思います。

ギャンブル性がない(面白味がない)から

 インデックス投資は、インデックスファンドを一度買ったらあとは持ち続けるだけ、いわゆるバイ&ホールド戦略が基本です。個別株投資のように、企業の事業内容や財務内容を詳しく調べたりする必要はありません。
 また、投資タイミングをはかって売買する必要もありません。リアルタイムチャートや板情報を見ながら「よし、今だ!」というような、瞬間的で息詰まる展開もありません。
 さらに、投資によって得られる期待リターンも、資産配分にもよりますが、せいぜい年率5〜6%程度です。 当然、デイトレで人生一発逆転!とか、奇跡の大暴騰!とか、あっという間に億万長者!というような、ドキドキ感、ワクワク感とは無縁です(その分リスクも低いのですが)。

 私も昔は、デイトレードやバリュー投資をやっていた時期もあるので、感覚的には理解できるのですが、これらの投資はとても面白いものです。もっと言ったら、一種の「ギャンブル性」があると思います。
 それに対して、インデックス投資は、実に退屈です。面白味がありません。毎日出てくる「ストップ高!」などのニュースを横目に、なにもすることがないのですから。

 そりゃあ、インデックス投資はマイナーになってしまうでしょう。

裏付けとなる理論の理解に数学が出てきて難しいから

 インデックス投資の理論的裏付けになる「現代ポートフォリオ理論」をきちんと理解するためには、分散・標準偏差など数学の知識(微分・積分)が必要になります。
 自分を含めて私立文系大学卒の人間にとって、数学の微分・積分は、全力で避けるべき「鬼門」であったはずです(笑)。投資の勉強を始めて間もない頃、「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール著)などを読んで、「わが人生で、まさか、こんなところで『数学の壁』にぶち当たるとは…」と呆然としたものです。
 誰だって、お金は儲けたいけれど、数学の勉強はしたくはありません。

 そりゃあ、インデックス投資はマイナーになってしまうでしょう。

 余談になりますが、現代ポートフォリオ理論の理解自体は難しくても、理論から導かれる最終的な結論は、幸いにも呆れるほど簡単です。

 「世界のインデックスファンドを買って放置せよ」

 たったこれだけです。

自信過剰な個人投資家が多いから

 投資家の自信過剰。行動ファイナンスではこれを、「オーバー・コンフィデンス」と呼んでいます。その方が、自信どおりにインデックスを超える実力を持っているのであれば、インデックス投資などする必要はないと思います。私にはその実力がないので、心の底から羨ましく思います。

 しかしながら、投資信託の世界では、アクティブファンドの7〜8割がインデックスに成績で負けています。これは洋の東西を問いません。
 にもかかわらず、投資信託におけるインデックスファンドの純資産額のシェアは1割以下(中編参照)であることを考えると、投資家側に明らかなオーバー・コンフィデンスが存在すると言ってしまっていいのではないでしょうか。
 多くの個人投資家が、インデックス程度のリターンでは物足りず、自分はインデックスを上回れる、あるいは、自分はインデックスを上回る投資信託を選べると考えているということになります。

 そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。

インデックス投資のことを最初から知らないから

 「最近、株が流行っているようだから、コンビニで買った雑誌に書いてあったとおりに、ちょっとやってみようかなぁ…チャートの見方…フムフム…」
というような感じで投資を始められる方もいらっしゃると思います。
 自分自身の生活パターンを考えれば、「会社帰りのコンビニで買った雑誌」、「テレビでやっていた億万長者のデイトレーダー」などをキッカケに投資に興味を持つのは、まあ自然な形だとは思います。

 でも、「手近なところ」に「たまたま」あった情報のみで、投資を始めてしまうのは、ちょっと危ないのではないかと思います。
 なぜなら、金融業界側は、個人投資家になるべく高いアクティブファンドを売りたい事情があったり(中編参照)、個人投資家により多くの売買をしてもらって手数料を稼ぎたい(稼がなければならない)事情があったりしますので、投資に興味を持った初心者が、「手近なところ」で「たまたま」見つかるように、金融業界側が儲かる投資法の情報を、意図的に配置している可能性があるからです。

 もし、投資に興味を持った初心者が、「テクニカル分析、ファンダメンタル分析、インデックス投資の3つの中から、好きな投資法を選んでね!」と最初に列挙されて選ばされたらどうなるでしょう?インデックス投資を選ぶかたが相当数いるのではないかと私は推測します。なにせ、最も「楽ちん」な投資法ですから。(ただし、裏付けとなる理論の理解を無視すればですが)

 でも、世の中そうはなっていないのが現実です。
 ちまたに溢れる投資情報は、金融業界が儲かるやり方で埋め尽くされているといっても過言ではないと思います。少なくとも、インデックス投資は金融業界にとって忌むべき存在でしょうから、なるべく初心者の目に触れないよう、小さく触れるだけ(もしくはまったく触れない)ということになります。

 そりゃあ、インデックス投資もマイナーになってしまうでしょう。

インデックス投資をどのように活用すればよいのか?

 ここまで、個人投資家の間で、インデックス投資がマイナーな理由を考えてみました。市場や業界側だけでなく、個人投資家側にも多くの要因があって、インデックス投資はマイナーなのです。
 しかしながら、前編でご紹介したように、インデックス投資は機関投資家の間ではとてもメジャーかつスタンダードであり、私たちの年金もインデックス運用されています。

 ネットやマネー誌でたまたま見かけた投資法を、「おっ」と思ってそのまま採用して大ダメージをくらい、市場から退場してしまう個人投資家があとを絶ちません。投資家として、ゲームオーバーがいちばん避けるべき事態です。
 そうならないようにするためには、まず、「インデックス投資を知っておくこと」が役に立ちます。
 インデックス投資がよいと思えば採用すればいいし、よいと思わなくても、スタンダードなインデックス投資を投資法の「モノサシ」として、他の投資法と比較・検討して、慎重に自分の投資法を選んでいただけたらと思います。

※インデックス投資の具体的方法が知りたいかたは、こちらの記事にまとめてあります(無料)。ご興味があればご覧ください。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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