ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―相場が上がってもうれしい、下がってもうれしい

2012-12-28

 最近の相場回復で、「ついにポートフォリオがプラ転した」「マイナスが大幅に減った」というコメントをブログやツイッター等のSNSで見かけるようになってきました。

相場が上がるとうれしいのは当然ですが…

 日本の株式市場は、リーマン・ショック以降もギリシャ・ショックに欧州債務危機と立て続けのネガティブ材料に襲われてきました。マスコミでも、まるで「資本主義の死」とでも言わんばかりの悲観的情報ばかりがはびこり、その状況が永遠に続くかのような論調でしたが、12月の衆議院議員総選挙の前後から、相場急回復にともない明るい話題が増えてきました。やはり、相場が上がることは素直にうれしいものです。

相場が下がってもうれしい!?

 一方で、投資信託をコツコツ積み立てる「積み立て投資組」としては、こういう時、安く仕込めるチャンスが思いのほか早く終わってしまいそうで、一抹の寂しさを感じるのも事実です。

 資産を売却するのが20年後や30年後という資産形成層の投資家のなかには、いささか不謹慎ですが、いわゆる「二番底」が来ればもっと安く仕込める時間が稼げてうれしいのにと思う方もいらっしゃるかもしれません。相場が下がっても、それはそれでうれしい面はあるのです。

積み立て投資家の理想的心理状態とは

 積み立て投資に慣れてくると、相場が下がると「安く仕込めてうれしい」という気持ちになり、相場が上がると単純に「資産が増えてうれしい」という気持ちになり、「上がってもうれしい、下がってもうれしい」という心境になることがあります。

 こうなったらしめたもので、相場変動のストレスから開放されるといったら大げさですが、相場と付き合うのが苦ではなくなってくるのです。「積み立て投資」を行なう個人投資家においては、この「相場が上がってもうれしい、下がってもうれしい」という心境が、ある意味理想的心理状態かもしれません。

 論理的にはどちらか一方がうれしければ、その反対はうれしくないということになるはずであり、なんだか屁理屈みたいに聞こえますが、この心境は心理学的に説明ができます。

人間の心の歪みさえ活用してしまえ

 心理学で「認知的不協和」という言葉があります。これは、自分の心の中にある矛盾を解消しようとする心理作用のことです。人間の「心の歪み」として否定的に説明されることが多いのですが、積み立て投資では、この認知的不協和を、逆に積極的に活用していると考えることができると思います。

 例えば、「相場の下落」(認知)に際して、安定していたいという気持ちと相容れない「ストレス」(不協和)を、「安く仕込める」という新しい認知で解消(不協和の低減)しようとしているのです。積み立てを継続すると決めている場合は、人間の心の歪みでさえ活用して投資継続の一助にしてしまうというわけです。

気持ちを納得させるコツ

 論理的に正しいことを頭で理解しておくというのはとても大切なことです。でも、「頭では分かっているんだけど、気持ちがついてこないんだよなー」ということがあるのも人間なら当然のことだと思います。気持ち的に自分を納得させるための「屁理屈」(気休めとも言う)を持っておくというのも、投資を継続するためのコツのひとつなのではないでしょうか。

 もちろん、なんでもかんでも感情のおもむくまま行動すると、いわゆる「感情の罠」にはまってしまい損をしやすくなってしまいますので、自分の心の作用をうまくコントロールすることが大切です。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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