ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―金融詐欺に騙されないための4つのポイント

2013-02-22

 2012年6月19日、AIJ投資顧問の社長らが逮捕されました。容疑は詐欺および金融商品取引法違反です。

 AIJ投資顧問は、虚偽の運用実績を示し、年金資産を運用すると偽ってファンド商品を販売した疑いが持たれています。厚生年金基金などから70億円もの資金を集めていたといいます。金融商品を検討し尽くしているはずの年金基金が詐欺に引っかかってしまった本件、「アホだ」と一蹴するのは簡単ですが、私たち個人投資家もここから何か学べることがあるような気がします。

 本件に関連して、ニッセイ基礎研究所からこんなレポートが出ていました。

 ニッセイ基礎研究所 研究員の眼
 2012/06/19 AIJ社長ら逮捕を受けて−金融詐欺に騙されないために気をつけるべきこと
 詳しくは上記レポートをご覧いただきたいのですが、要点をごく簡潔にまとめると以下のとおりです。

(1) 複数の人間で検討する
(2) 第三者の意見を聞く
(3) ある程度の時間をかけてよく考える

 なるほど、ごもっともです。第三者も含む複数の人間で、時間をかけて検討する。まさに王道ですね。ただ、これは意思決定の「体制」についてだけの話です。さらにもうひとつ、本質的な意思決定要素を付け加えたいです。それは……
(4) 標準的な期待リターンとリスクの水準を数字で把握しておく

ことです。もっと具体的に言えば、代表的なリスク資産である「日本株式クラスの期待リターンとリスクの数字を、頭に叩きこんでおくこと」です。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によれば、日本株式クラスの期待リターンとリスクは以下のとおり。

期待リターン +5.30%
リスク(標準偏差) 22.15%
出典:GPIF「基本ポートフォリオの検証について(平成20年6月23日)」

 日本株式100%の全力投資でも、1年後に期待できるのはたった +5%ちょっとです。しかも、それを享受するには、そこから年間で上下22%もの価格変動(しかもそこに収まる確率は7割程度)を覚悟しなくてはなりません。

 これは、意思決定における「ものさし」を持つということです。この「ものさし」を持っていれば、長期金利が1%以下というこの超低金利時代に、10%とか50%とかいう異様に高い期待リターンには、それに見合う高いリスクがあって然りだし、それがなさそうに見える時には、詐欺ではないかと予想することができます。
 ポイントは、定性的な判断ではなく、定量的な「数字」で判断できることです。

 私自身、今までこの「ものさし」で、無用な損失を回避してきました。例をあげると、かつての「平成電話パートナーシステム」(利回り10%をうたい破綻、社長ら5人が詐欺容疑で逮捕。当時日本経済新聞にも大きな広告が出ていたため、父が投資を検討していたところ、私が必死で思いとどまらせた)や、「ジュラシック・パーク・インスティテュート・ツアー匿名組合」(利回り10%をうたい実績は元本1/10に。当時、「コンテンツファンド」が流行する中、大手ネット証券等で大々的に売られており投資を検討したが思いとどまった)などです。

 上記の金融商品や同類の怪しげな金融商品の顛末を見るにつけ、「著名な誰それが運用しているから」とか、「大手新聞に広告が出ているから」とか、「大手金融機関で取り扱っているから」といった、権威に頼った定性的な情報は、むしろ判断をミスリードする恐れがあると感じます。冷徹な「数字」で妥当性を判断することが、とても大切だと身にしみました。

 ニッセイ基礎研が指摘する「体制」と、私が付け加えた「ものさし」を持っていれば、詐欺を回避できるだけでなく、詐欺とは言わないまでも世にあふれる悪徳金融商品による無用な損失を回避できる可能性が高まります。

 ぜひ、上記「体制」と「ものさし」を頭の片隅に置いておき、迷った時には思い出してみてください。一人でも多くの方が、詐欺や悪徳金融商品から身を守ることができれば幸いです。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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