FPに聞く「アベノミクス活用術」、資産を守り増やす

2013-03-11

 安倍晋三首相が掲げる経済政策「アベノミクス」への期待から昨年11月以降、円安・株高が急速に進行した。一方、財政支出拡大を受け将来的な金利上昇リスクに対する懸念は根強い。個人投資家はアベノミクスで激変したマーケット環境においてどのように資産を守り、増やせばよいのか。為替と株式、そして住宅ローンへの影響について、ファイナンシャルプランナーの神戸孝氏、藤川太氏、山本節子氏の3名に聞いた。

長期では円安トレンド、国内不動産ミニバブルの可能性

 「これからも円の下落は続くのか」――。投資家の関心が高いこの点について、神戸氏は本格的な円安局面入りの2つの条件として、「アベノミクスが成功し日本が実際にデフレを脱却する」「貿易赤字が定着し経常収支が常に黒字ではなくなる」ことを挙げた。また、米景気の回復で米金利が日本の金利より早期に上昇し、日米金利差が拡大することがドル高・円安を促すとみる。藤川氏も「日銀総裁人事を見れば分かるが、政府は意図を持って円安の方向に誘導しようとしている」と指摘。昨年11月以降の円売りが急ピッチだったため、短期的にはいったん円の買い戻しが進むことが予想されるものの、長期では円安トレンドになるとの見方を示した。

 将来的な一段の円安に備え、持っておきたいのはやはり外貨建て資産。日銀が2%の物価上昇率の目標を掲げるなか、「インフレへの抵抗力を付けるためにも外貨建て商品の比率は高めたい」(神戸氏)。実際、同氏は円安進行を受け、顧客にアドバイスするモデルポートフォリオの外国債券比率を5%引き上げ、国内債券の比率を5%引き下げた。ポートフォリオ全体の年間目標リターンが3−5%程度の場合の外債比率は35%、目標リターンが6−8%の場合の外債比率は30%。いずれの場合も外国株式と外債を合わせると資産の半分近くを占める(図参照)。

神戸氏が顧客にアドバイスするモデルポートフォリオ

神戸氏が顧客にアドバイスするモデルポートフォリオ

 こうしたポートフォリオは個別の銘柄や投資信託で構築することも可能だが、メンテナンスの手間や手数料を考えると1つの投信でさまざまな資産に分散して運用できる、バランス型と呼ばれるファンドが便利だ。神戸氏の会社が投資助言し、信託報酬が低めの「FPバランスファンド(安定型/安定成長型)」の他、販売手数料がかからないノーロードのバランス型ファンドもある。

藤川 太 氏

藤川 太 氏
ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者)
宅地建物取引主任者
家計の見直し相談センター
生活デザイン株式会社 代表取締役

 藤川氏も円安が見込まれるなかで海外に投資する重要性を認め、特に米不動産市場に注目とした。米国の不動産を買いたいという顧客が多く、月1−2回のペースで米国に足を運んでいる同氏。中古住宅の需要が高まっており、「半年前は物件を複数選べる状況だったが、現在は1件確保するのに精一杯」。それでも値段はまだ安く、同氏が先日訪れたラスベガスでは新築に比べ中古は半額で、1200万円払えば中古の戸建が購入可能。半年前に購入すれば価格は1.5倍近く跳ね上がったとした。

 一方、国内についても、「円安により海外の投資家から日本の不動産は割安に見えている」と述べ、1ドル=100円程度まで円安になれば不動産市場に海外からの資金流入が加速すると同氏は予想。円安を受け06−08年に海外マネーが日本の不動産市場に押し寄せた「ミニバブル」再来の可能性もあるという。

日本株は業績相場にシフト、参院選まで大崩れはない

神戸 孝 氏

神戸 孝 氏
FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社 代表取締役
CFP®
早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師、日本FP学会会員
日本FP協会理事、金融庁金融経済教育懇談会委員、同金融経済教育研究会メンバー(現任)同金融審議会専門委員(現任)などを歴任

 日本株への投資はどのようなスタンスで臨むべきか。11月以降の株高は、日銀による大胆な金融緩和への期待を背景にした金融相場の側面が強いと神戸氏。「懐疑の中で株価がどんどん上昇する展開だったので、乗り遅れた投資家も多いだろう」。同氏の描くシナリオでは、円安の定着とアベノミクスの成功で、業績相場に移行して循環物色の流れになれば、慌てずに投資先を選定することが可能になる。今夏の参院選勝利により「ねじれ」国会を解消し、安定政権を樹立するまでは次々と景気浮揚のための手を打つことが予想され、何か突発的なイベントが発生しない限り、相場が大きく崩れることは見込みにくいという。ただ、その先、財政問題および国債の金利上昇をコントロールできるか、消費を実際に回復させられるかは現時点では不透明で、参院選後の相場は慎重に見ておいた方がいいだろうとしている。

 株価上昇がテレビなどで広く報じられ日本株への関心が高まっているが、山本氏は「1回の上げ相場で儲かったからといって投資が上手だと過信せず、10年間は初心者と思った方がよい」と注意を促す。投資は2−3回の景気循環を経て、上げ相場と下げ相場の両方を経験しなければ分からないことが多いと説明。老後にいきなり投資を初めて失敗しないためにも、若い頃から慣れておくことが必要とした。

 日本株に限らず3人のFPが共通して若い資産形成層の投資家に勧めたのが積み立て投資だ。山本氏は、「リスクヘッジの手段としては時間分散や資金分散、銘柄分散があるが、積み立て投資で時間分散することは効果が大きい」と述べた。個人投資家が今回のアベノミクス相場のような急激な株価上昇局面を利益機会として捉えるのは容易ではなく、「心穏やかに長期投資を行いたいなら積み立ての方がよい」(神戸氏)。投資効率の面でも資産形成層が少ない資金で高リターンを狙っても資産はそれほど増えないため、藤川氏は将来により大きな金額で運用できるよう、若いうちは投信積み立てや財形制度を用いて資産を増やすようアドバイスしている。

金利ミックスの活用検討、固定金利選択型も有効

山本 節子 氏

山本 節子 氏
(株)リスタート代表取締役
(CFP®・FP技能士1級・宅地建物取引主任者・健康生きがいづくりアドバイザー
 日本証券アナリスト協会検定会員補)

 アベノミクスのリスクとして、財政支出の拡大が続くと国債金利はいずれ上昇するとの懸念もくすぶる。特に変動金利型で住宅ローンを契約した人は、金利上昇で返済額が膨らむため要注意だ。現状、変動金利型は固定金利型に比べ金利が低く設定されているため人気だが、金利上昇リスクが意識されるなか、山本氏は「住宅ローン全額を変動金利型にするのではなく、変動と固定を組み合わせた方がよい」とする。具体的には、夫と妻でそれぞれ変動と固定でローンを組んだり、変動と固定を組み合わせた「金利ミックス」と呼ばれる商品が利用可能だ。

 住宅ローンを利用するうえでは金利動向をウォッチするようにしておきたい。ここで重要となるのが、固定金利は新発10年国債利回りなど長期金利に連動し、変動金利は政策金利(無担保コール翌日物金利)に代表される短期金利に連動するということ。藤川氏は日銀が金融緩和し続ける限り金利は落ち着いているが、いよいよ日銀が緩和を終了したり緩和のペースを落とす段階で長期金利が短期金利より先に上昇し始めると予想。「変動金利型の利用者でよく短期金利が上昇したら固定に切り替えようという人がいるが、短期金利が動く頃にはすでに長期金利が大きく上昇している可能性が高く、固定に移れなくなる」と同氏は警鐘を鳴らす。

 このため、藤川氏も金利ミックスを活用するか、固定金利選択型と呼ばれ当初10年など一定期間を固定金利で借りられるタイプを利用することも選択肢とする。10年固定でも金利は1%台前半と十分低いので、固定のうちに繰り上げ返済を行い残金を減らすことで金利への感応度を減らすとよいとアドバイスした。

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