ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―投資信託のいわゆる「隠れコスト」って何?

2013-03-22

 投資信託の運用コストを評価する時には、申し込みメモや目論見書などで「信託報酬」(最近は「運用管理費用」と呼ばれることが増えてきました)を注意深くチェックしましょう。

 信託報酬は、投資信託の運用・管理の代価として投資家が負担するコストです。資産に対して年率○%という形で表記され、これが毎日投資信託の資産から少しずつ差し引かれます。ところが、私たち個人投資家は、この手数料を払った感覚がありません。それは、投資信託の基準価額が、信託報酬を差し引いた上で計算されるからです。

 このように、投資家から気づかれないうちに引かれている信託報酬ですが、長期投資においては、無視できない大きな影響があります。

信託報酬の破壊力

 例えば、日本株のアクティブファンドの平均信託報酬は、年率1.46%です。これを100万円分買って、10年間保有すると、保有資産の14.6%が手数料として持っていかれてしまいます。金額にして14万6000円も持っていかれてしまうということになります。しかも、これは投資信託の基準価額が上がろうが下がろうが関係なく、持っていかれます。

 信託報酬の無視できない影響がイメージいただけたでしょうか。だからこそ、私たち個人投資家は信託報酬が低い投資信託を選ぶ必要があります。もちろん、基準価額の上昇が見込めるかどうかで投資信託を選ぶというのが基本ですが、本質的に「リターンは不確実、コストは確実」です。まずは、確実に努力が報われるコスト削減を徹底して、低コストな投資信託の中から、有望なもの探すのが合理的です。

 金融機関は、その逆をやってきます。つまり、高コスト(=金融機関がより儲かる)な投資信託の中から、良さそうなものをセレクトして私たち投資家にすすめてきがちです。順番を間違えないようにしましょう。

実は信託報酬以上に手ごわい「隠れコスト」

 投資信託の信託報酬の影響の大きさを理解できたら、ワンランク上のレベルの投資家になったと言ってよいでしょう。ここで、本コラムを終わらせてもよいのですが、ワンランク上になったあなたに、ぜひ知っておいてほしいのが、いわゆる「隠れコスト」です。

 「隠れコスト」ってなんのこと?投資本でもあまりみかけないんだけど??

 そうお思いの方も多いかもしれませんが、無理もありません。証券会社の申し込みメモや目論見書にも掲載されていないからです。では、どこに掲載されているのか?それは、決算時に運用会社から送られてくる「運用報告書」です。

1万口当たりの費用明細

 ある人気投資信託の運用報告書の抜粋ですが、費用明細の欄に、

(a)信託報酬 194
(b)売買委託手数料 18
(c)有価証券取引税 15
(d)保管費用等 12
合計 239

 と書かれています。この(b)(c)(d)の部分が、いわゆる「隠れコスト」です。それぞれ、投資信託の有価証券の売買にかかる手数料、その税金、証券の現地保管・受渡にかかる費用などなのですが、ここでは詳しい意味は割愛します。それよりも、この「隠れコスト」を含めた「実質コスト」の計算方法(概算)を知ってほしいのです。

「実質コスト」を自分で計算してみよう

 計算式はそんなに難しくありません。

信託報酬率(○%) ÷ 信託報酬の金額(○○○円) × 隠れコストの合計(○○○円) =実質コスト(%)

 例えば、上記の投資信託の信託報酬は年率1.869%なので、

1.869% ÷ 194円 × 239円 = 実質コスト2.303%

 となります。つまり、この投資信託にかかる運用コストは、信託報酬の年率1.869%ではなく、実質的には年率2.303%なのです。

 先ほどの100万円分を10年間運用した場合に当てはめると、信託報酬の18万6900円でだけでなく、実は4万円以上も高い23万300円が実質コストとして持っていかれることになっていたのです。

 この「隠れコスト」が少しくらいなら問題ありませんが、投資信託によっては意外と高く(特に、新興国に投資するものが高い傾向アリ)、実質コストは思っていた以上に高かったなんてこともあるので、注意が必要なのです。

 しかも、困ったことに、「隠れコスト」は信託報酬と違い毎年同じではなく、その年によって変わります。だから、証券会社の申し込みメモや目論見書にも掲載されていないのです。いちいち運用報告書をチェックするのは、少し面倒くさいですね。

「実質コスト」が一発で分かる秘密のサイトがある!?

 そんなあなたに、信託報酬だけでなく、「隠れコスト」まで掲載されているスグレモノの情報サイトがありますので、ご紹介しておきます。

 それは、皆さんご存知の投信情報サイト「モーニングスター」(https://www.morningstar.co.jp/)です。そんな情報出ていたっけ?とお思いのかたもいらっしゃると思いますが、たしかにモーニングスターも昔は信託報酬のみの掲載でした。しかし、2010年11月のリニューアル以降は、信託報酬だけでなく、隠れコストも加味した「実際の経費率」が掲載されています。

 投資信託の「隠れコスト」も把握して、納得の上で気持ちよく資産運用したいものです。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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