ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―投信全体の運用コストは上がる中、インデックスファンドは?(前編)

2013-04-05

 前回のコラムで、投資信託の運用コストである「信託報酬」は、長期の投資実績に無視できない大きな影響をあたえることを書きました。

 インデックスファンドにおいても、信託報酬は低い方が好ましいのは変わりません。私たち個人投資家は、同じインデックス(TOPIXやMSCIコクサイなど)に連動するインデックスファンドであれば、できるだけ信託報酬が低いものを選んで投資する方が、将来のリターンが増える可能性が上がります。

 ところが、投資信託全体の傾向として、信託報酬は上がり続けています。投資信託全体の平均信託報酬は、2002年は年率1.37%でしたが、2012年には 1.50%にまで上昇しています。これは、少しでも手数料収入(信託報酬は金融機関側から見ると収入)を増やしたい金融機関側の努力の結晶とも言えるわけですが、私たち個人投資家にとっては残念な話です。

 ところが、幸運なことにインデックスファンドはその限りではありません、なんと、逆に信託報酬がどんどん下がってきているのです。

 私はその時々で最安値クラスのインデックスファンドに投資してきたのですが、たとえば、10年前に投資していた外国株式インデックスファンド「ステート・ストリート外国株式インデックス」の信託報酬は、年率0.9975%でした。その後、何度かファンドを変更してきましたが、現在の投資している「外国株式インデックスe」の信託報酬は、年率0.525%と10年前のほぼ半分の水準です。よい時代になったものです。

 しかし、インデックスファンドeシリーズをも凌ぐ、低コストファンドシリーズが2013年5月13日に登場します。EXE−i(エグゼアイ)シリーズです。アセットクラス毎に「先進国株式」、「新興国株式」、「グローバル中小型株式」、「先進国債券」、「グローバルREIT」の5ファンドが設定される予定です。

 その信託報酬は今までのインデックスファンドよりもさらに低く、マスコミが報道するもっと前から、投信ブロガーの間で瞬く間に情報が駆け巡りました。その信託報酬を見てみましょう。

先進国株式クラス
EXE−i 先進国株式ファンド 年率0.3515%

(参考) SMT グローバル株式インデックス・オープン 年率0.525%

新興国株式クラス
EXE−i 新興国株式ファンド 年率0.4355%

(参考) SMT 新興国株式インデックス・オープン 年率0.63%

グローバル中小型株式クラス
EXE−i グローバル中小型株式ファンド 年率0.5155%

(参考) 無し ※同クラスのインデックスファンドは他になく、貴重なラインナップです。

先進国債券クラス
EXE−i 先進国債券ファンド 年率0.4415%

(参考) SMT グローバル債券インデックス・オープン 年率0.525%

グローバルREITクラス
EXE−i グローバルREITファンド 年率0.5315%

(参考) SMT グローバルREITインデックス・オープン 年率0.5775%

 現在、低コストなインデックスファンドシリーズで最有力クラスのSMTインデックスシリーズと比較しても、その信託報酬の低さが際立っています。コストに敏感な投信ブロガーたちが色めき立ったのも無理はありません。

 ただし、このEXE−iシリーズは今までのインデックスファンドシリーズと違い、少し変わった特徴があります。それは、厳密には「インデックスファンドではない」ということです。

 「えっ?どういうこと?」と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。正確には、複数のETF(指数連動型上場投資信託)に投資をして運用する、いわゆる「ファンド・オブ・ETF」なのです。ふつうのインデックスファンドが、ひとつのインデックス(指数)に連動するように運用されるのに対して、「ファンド・オブ・ETF」はそれをいくつも束ねて、ひとつのアセットクラスのファンドを作っているのです。

 先進国株式クラスを例にとって、具体的に見てみましょう。
 「SMT グローバル株式インデックス・オープン」は、MSCI コクサイ・インデックス(日本を除く先進国株)に連動するように運用されます。

 それに対して、「EXE−i 先進国株式ファンド」は、「シュワブU.S. ブロード マーケット ETF」(米国株)に60%、「バンガード・MSCI・ヨーロッパETF」(欧州株)に30%、「i シェアーズ MSCI パシフィック(除く日本)・インデックス・ファンド」(アジア・太平洋株)に10%、合計3本のETFに投資して、全体としてMSCIコクサイ・インデックスと同じような運用がされるといった形です。

 3本のETFは、米国市場に上場されている「海外ETF」で、3本の信託報酬を加重平均すると、年率0.11%という“超”低コスト商品です。それを束ねて1本のファンドにしているのが「EXE−i先進国株式ファンド」なのです。EXE−iシリーズの他のファンドもこのような仕組みになっています。

 ですので、厳密には、各アセットクラスを代表するインデックス(指数)とまったく同じパフォーマンスではないのですが、過去のデータを見る限り、ほとんど差はないと言ってよいレベルになっています。

 ところで、ここである疑問が湧いてきます。「その“超”低コストな海外ETFに、自分で直接投資すればいいじゃん?」という疑問です。それはごもっとも。これについての解説は、また次回のコラムで。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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