ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―隠れた勝者は、過去の相場低迷時にも怖がらないで買い続けてきた「コツコツ投資家」たち

2013-05-17

 2013年3月6日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に、「コツコツ投資家」が隠れた勝者だとする記事が掲載されています(日経電子版 2013/03/06「コツコツ投資家 陰の勝利 買い続け株高で開花」)。

 日経新聞の記事によると、「投資環境を大きく変えた円安・株高。しかしうまく波に乗れた個人はあまり多くない。『隠れた勝者』は、過去の相場低迷時にも怖がらないで買い続けてきた『コツコツ投資家』たちだ」とのこと。ここでいうコツコツ投資家というのは、積み立て投資の投資家という意味だと思います。記事では、何人かのコツコツ投資家のコメントが掲載されています。

「昨年の秋から損益は黒字に転換、今は投資額1250万円に対して250万円くらいの含み益」
「08年のリーマン・ショック後は大幅な含み損だったが、今は400万円程度の含み益」
「対象と時期を分散して長期投資し、世界経済が拡大していく恩恵を受けるのは実は投資の王道」
「僕らは何十年も先の老後のために投資しているので、目先の損益はどうでもいい。下がっても、安い値段で買い続けられるので逆にプラス」
「年齢が上がれば、価格変動の大きい株式の比率を下げ、現金や債券の比率を高めておく」

 今回の円安&株高で含み益が出ているようで、なによりであります。また、記事が出た3月から約2ヶ月が経過しており、市場の好調が継続していることから、現在はさらに含み益が拡大していることが予想されます。

 日経記事では、「敗者のゲーム」著者のチャールズ・エリス氏の、
「個人に大切なのは低コストの商品で時期と対象を分散して投資し続けること」
「相場には、突然上がる『稲妻が走る瞬間』があるが、予測できない。『稲妻』の恩恵を受けるには市場に居続けること」
というコメントを引用していますが、そのとおりだと思います。

 ただし、ここですこし注意すべきなのは、積み立て投資は、「最も儲かる投資法」でもなければ、「必ず儲かる投資法」でもないということです。バイ&ホールド戦略の宿命で、昨今のような「暴騰」を絶対に逃さない代わりに、時折起こる「暴落」もフルに喰らいます。

 それに対処するために、年間の最大損失を確率的に計算し、自分のリスク許容度の範囲内に収まるポートフォリオを組むわけです。それもこれも、長期的には期待リターンがプラスであるという信念があればこそできることです。現在、報われているコツコツ投資家たちは信念を持って、下げ相場も耐えてきたということです。

 しかしながら、2008年のリーマン・ショック後、数年間にわたる下げ相場で、バイ&ホールドや積み立て投資という投資法について、マイナスを抱えつつ投資を続けるという「プロセス」(途中経過)だけを捉えて、コツコツ投資家たちは必要以上の中傷を受けてきました。平たく言えば、「バカ扱い」をされてきたのです。

 当時は本屋にも、「資本主義経済の終焉」「バイ&ホールドは死んだ」と主張する本が並んでいました。まるで、今後は長期的にプラスの期待リターンは望めないかのような絶望的な主張ばかりでした。冒頭の記事を書いた当の日経新聞も、まるでこの世の終わりのような悲観的な報道ばかりしていたのを記憶しています。

 過去、何百年と繰り返されてきたように、経済状況はあっという間変わります。好況と不況を繰り返しながら、長期的に資本主義経済は大きく発展してきました。

 昨今の円安&株高により、コツコツ投資家たちが大きく報われる状況になっている現在、当時「バカ扱い」していた人たちは現在、だんまりを決め込んでいます。「バイ&ホールドは死んだ」と喧伝していた出版社はいま何を主張されているのでしょう。

 もちろん、今後、相場がどうなるかはまったく分かりません。また暴落が起こりコツコツ投資家たちがまたマイナスを抱える状態になるかもしれません。

 しかしながら、数年間にわたる相場低迷時の含み損を気にせず、強い信念をもって長期的な目的達成にむけてコツコツ投資してきた人が、大いに報われる状況になったという2013年の出来事を、ひとつの「事実」としてここに記録しておきたいと思います。

 資本主義経済が終焉したわけではないし、バイ&ホールドも死んではいないのです。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

この情報は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、その正確性、安全性等について保証するものではありません。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、本情報提供者は一切の責任を負いません。本画面、資料に掲載されている事項は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。 当該記事の内容は筆者の見解に基づくものであり、イー・アドバイザー(株)及びモーニングスター(株)の公式見解を表すものではありません。

投資にあたっての意志決定・最終判断はお客様ご自身の裁量でお願いいたします。