ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―個人ブロガーがいかにしてメディアの連載コラムを執筆するに至ったか

2013-06-28

 昨年2012年8月から始まった本連載「ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム」も、今回で20回目です。今まで、投資、特にインデックス投資に関するコラムを書いてきましたが、読者の皆さまのなかには、「なぜ、ブロガーが連載コラムを書いているの?」と不思議に思われているかたもいらっしゃると思います。そこで、今回は少し趣向を変えて、個人ブロガーがいかにしてオンラインメディアの連載コラムを執筆するに至ったか、という話をしたいと思います。

 もともと、私はメディアでの執筆活動を目指していたわけではありません。10年前、自分自身の資産運用を模索する中で、米国No.1テキストと言われていた「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール著)をはじめとする翻訳本が提唱する「インデックス投資」を、日本でもやってみたいと思いました。

 しかし、実際に実践してみたところ、様々な壁にぶち当たりました。特に、大きかった壁は、当時の日本には低コストなインデックスファンドがほとんどなかったこと。あっても、すぐに繰上償還や取り扱い廃止になってしまったこと。それらは、日本でインデックス投資があまりにもマイナーであり、実践者が少な過ぎることから引き起こされるものだと考えました。

 そこで、世の中に、「こんなに手間がかからなくてよい投資法がありますよ」ということを紹介したい一心で、8年前、インデックス投資のブログを書き始めました。ブログでは、「ウォール街のランダム・ウォーカー」の内容をもとに、他の識者たちのよいところをつまみ食いしつつ、日本の金融環境に合わせてアレンジし、ネット上の無料ツールなどの便利情報などを紹介していきました。

 しかし、このブログが自分の人生を大きく変えていきました。ブログを書き始めたたことで、ふつうの会社員である私に何が起こり、その時どうしたかを振り返ってみたいと思います。

ブログ開始当初は、暗黒時代

 ブログを書き始めて最初の1年は、特に何も起こりませんでした。虚空に向かって話し続けていた感覚です。ひとりごとは得意でしたが、けっこうつらいものです。ここでやったことは、勉強しながらとにかく更新をやめないことだけ。

 しかし、コツコツ書いて2年目に入るくらいから、だんだんPV(ページビュー)が伸びてきました。自分のブログではどんなことを書くと読者が興味を持ってPVが上がり、どんなことを書くとPVが下がるかが、だんだんと分かってきました。

 ここでやったことは、できるだけ実践したことを書くこと。ぽっと出の人間の主張など見向きもされないはずですが、「実践記」であればひとつの実例ではあるので、誰かしらの多少の役には立つこともあったのかもしれません。また、よく分からないながらも、見やすいブログの構成や文章を模索しはじめました。何度か読者アンケートを実施して改善していきました。(今でもまだまだなので日々模索中)
<関連記事> 第2回読者さまアンケート結果報告 (その1)(その2)(その3

ブログがきっかけで人脈が広がりだす

 そうこうしているうちに、ネットで交流しているブロガーたちと会いたくなってきました。オフラインでも交流するようになりました。それが転じて、個人投資家による投資イベント運営に加わったりするようになりました。人脈が広がると、自分が読んでいた本の著者のかたや、自分が保有しているファンドの運用会社の社長さんなど、とんでもない著名人とお会いする機会にも恵まれ始めました。

 ここでやったことは、受け身ではなく自分から声がけをすることです。それから、かしこまって名刺交換をすることが増えてきて思ったことは、奇抜なハンドルネームじゃなくてよかった…ということです(笑)

マネー誌の記者さんからメールが……

 その頃になると、どこで見つけていただいたのか分かりませんが、マネー誌などのメディアの取材を受けるようになってきました。そこで求められていたのは、やはりブログに書いているインデックス投資の説明だったり、その体験談だったりでした。

 初めての取材依頼はブログのサイドバーに用意したメールフォームから来ました(今でもそこから依頼が来ることが多いです)。自分から「載せてほしい」と売り込んだことは一度もありません。

 ここでやったことは、こちらは趣味でもあちらは仕事なので、できるだけ「仕事としての対応」をしました。と言っても、時間は守る、話は明確に、数字を間違えない、などの当たり前のことですが。あとは、ブロガーなので、取材後にはその日の取材内容に合ったブログ過去記事を、参考に記者さんにお送りしていました。
<関連記事> 投資ブログの取材をお受けする時に注意していること

TwitterのDMで「本を書きませんか?」

 SNSが面白そうだったので、ブログと連動する形で、mixiやTwitterをはじめました。結局mixiはウェットすぎて挫折してしまいましたが、Twitterにははまりしました。ブログの更新情報をお知らせするとともに、同じ興味・関心を持つ人たちと意見交換や議論をしていました。ちなみに、初めての著書「ほったらかし投資術」を書くことになったきっかけは、経済評論家の山崎元氏からの「いっしょに本を書きませんか?」というTwitterのDM(ダイレクト・メッセージ)でした。
<ご参考> 水瀬のTwitterアカウント: @minasek

 ここでやったことは、Twitterにはまりすぎてブログ更新をおろそかにしないこと。それから、Twitterでの更新情報通知後の読者さんとの議論をもとに、また新たなブログ記事を書くという循環を作りました。そして、本の執筆は言わずもがなですが、その時の自分の持てる力を全て注ぎ込みました。
<関連記事> 本日発売!「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」(山崎元・水瀬ケンイチ著)

「自分メディア」が執筆の話を連れてくる

 ダイヤモンド・オンラインに連載した時の執筆依頼はブログのメールフォームから、現在執筆中のイー・アドバイザーの連載コラム(本コラムです)の執筆依頼はやはりTwitterのDMから来ました。イー・アドバイザーの話をお受けした直後(本当に翌日!)、以前取材を受けたことがある記者さんから電子書籍執筆の依頼メールが来て、さすがに私のキャパシティを超えてしまいそうだったので、泣く泣くお断りしたこともありました。

 いずれもブログやTwitterからお話が来ています。特に営業活動的なことはしていませんし、募集に応募したこともありません。これがよく言われている、「自分メディア」のようなものなのかもしれません。金融機関に所属しているわけでもなく、情報発信を生業としているわけでもない、「しがらみ」や「色」がないという特色が伝わり、それがたまたまメディア側のニーズに合ったのかもしれません。

<ご参考>
ダイヤモンド・オンライン連載コラム(連載終了)
イー・アドバイザー連載コラム(連載中)

すべてはブログを書きはじめたから起こったこと

 上記の出来事はいずれもブログを書く前の自分では想像もつかないことです。人生、何が起こるかわかりません。「コツコツやっていれば、何かのきっかけで一気に転がりだすこともある」などということは、手垢にまみれた言葉かもしれませんが、ひとりのブロガーのちっぽけな実例を、こうしてリアルタイムでお見せできているのではないかとは思います。

 今後も、「個人投資家目線」で、インデックス投資を中心とした有用な情報を提供できるよう、精進する所存です。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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