ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―インデックス投資への「過剰期待」と「過小評価」(前編)

2013-07-12

 昨年から日経平均株価が上昇してきたからか、少し知名度が上がってきたのか、ここのところ新聞や雑誌で「インデックス投資」について取り上げられることが増えてきました。ブログやSNSでの関連投稿も増えているようです。

 いずれの情報でも、「長期」「分散」「低コスト」をうたい、インデックス投資の優位性をシンプルに分かりやすく説明しています。いずれも投資の要諦であり、とても大事なことです。ただ、分かりやすくするために、説明を簡略化した情報が増えてくることで、個人投資家の間でインデックス投資に対する「過剰期待」と「過小評価」が見え隠れするようになってきたと感じています。

 私自身も過剰期待と過小評価に引っかかっているかもしれませんので、ここで整理しておきたいと思います。インデックス投資にもいろいろありますが、ここでは「インデックスファンドの積み立てによる国際分散投資」と定義して、よく見かける過剰期待と過小評価の例をそれぞれ列挙してみます。

 まずは過剰期待から。

インデックス投資に対する過剰期待

(1) 日経平均のインデックスファンドを買えばよいだけ

 インデックス(指数)の説明で日経平均がよく引き合いに出されますが、これは一例に過ぎません。日経平均は、日本という一国のわずか225社の平均株価指数であり、インデックス投資としての分散は不十分です。運用のシンプルさがインデックス投資の魅力のひとつですが、国内外の株式や債券等に広く分散する「国際分散投資」がインデックス投資の基本です。

 日経平均のインデックスファンドを買えばよいだけというのは、過剰期待です。

(2) インデックス投資なら損益がマイナスにならない

 これも非常によく見かける過剰期待です。たしかに、様々なアセットクラスに分散したインデックス投資であれば、リスクを低減することはできますが、それは損益が必ずプラスになるということと同義ではありません。リスクの低減とは、値動きの幅が小さくなるということであり、マイナス方向の値動きを減らしてプラス方向に持っていくことではありません。市場の動きによっては、当然マイナスの状況が続くこともあります。

 インデックス投資なら損益がマイナスにならないというのは、過剰期待です。

(3) 期待リターン近辺の利益が毎年コンスタントに出る

 各インデックスの期待リターンとその発生確率は、概ね左右対称の釣鐘型の分布になり、1年後の実際のリターンは上にも下にもブレます(ざっくり半分の確率で期待リターンを下回る)。また、実際のリターンは期待リターンの数字に近いところで若干ブレるというレベルではなく、単年で見れば上にも下にも「暴れまわる」という感覚が正しいと思います。

 例えば、先進国株式(MSCIコクサイ)の期待リターンは年率+6%程度と見積もられることが多いですが、実績は以下のとおり。とても「毎年+6%近辺」と言えるレベルではありません。

2001年 ▲2.33%
2002年 ▲27.70%
2003年 +19.31%
2004年 +12.06%
2005年 +22.64%
2006年 +23.69%
2007年 +6.62%
2008年 ▲53.39%
2009年 +35.62%
2010年 ▲0.91%
2011年 ▲8.40%
2012年 +30.70%

*税引前配当込み、米ドルベースの各年末値に三菱東京UFJ銀行の対顧客為替レート(TTM)をかけて算出

 期待リターン近辺の利益が毎年コンスタントに出るというのは、過剰期待です。

(4) 過去のデータさえあればリスクと期待リターンが自動的に計算できる

 インデックス投資は、何から何まで計算で求められる完全合理的な投資法だと思い込んでいるかたがいらっしゃいますが、そんなことはありません。各インデックスの過去のデータから、リスク(ボラティリティ)はある程度計算できます。しかし、期待リターンは、(算出方法にもよりますが)最後のところで人の考えや予測の余地が入ります。期待リターンは、過去の実績を単純に平均したものではないということを覚えておくとよいと思います。

 過去のデータさえあればリスクと期待リターンが自動的に計算できるというのは、過剰期待です。

(5) 効率的フロンティアはずっと変わらない

 効率的フロンティアとは、リスクとリターンの関係において、所与のリスクで最大のリターンを提供するポートフォリオをプロットした曲線のことです。インデックス投資家は、自分が前提としたデータに基づき「ただひとつの正解」であるポートフォリオが求められたという気分になってしまい(計算上はそうなのですが)、これを絶対視してしまいがちです。しかし、効率的フロンティアを算出するための前提となる係数(相関係数など)が「日々変動している」ことを忘れてはいませんでしょうか。インプットするデータが変われば、当然アウトプットされる結果も変わります。

 効率的フロンティアはずっと変わらないというのは、過剰期待です。

 以上、よく見かける過剰期待の例を5つあげてみました。「ええ〜インデックス投資ってそうだったの?」「話が違うじゃないか」と思われたかたもいらっしゃるかもしれません。私も昔、知ってびっくりしたことがいくつかあります。

 新聞・雑誌やブログ等で、インデックス投資の良さを分かりやすく説明しようとすると、言葉足らずだったり、極端な表現になってしまい、上記のような誤解が生まれるという「副作用」もあるようです。こういった誤解を放置しておくと、いざ下げ相場になった時に、「こんなはずではなかった!」「騙された!」ということになってしまいかねません。

 インデックス投資は良い投資法ですが、「過剰期待」にはご用心あれ。

 次回は逆の、インデックス投資に対する「過小評価」について整理したいと思います。

(後編に続く)

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

この情報は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、その正確性、安全性等について保証するものではありません。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、本情報提供者は一切の責任を負いません。本画面、資料に掲載されている事項は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。 当該記事の内容は筆者の見解に基づくものであり、イー・アドバイザー(株)及びモーニングスター(株)の公式見解を表すものではありません。

投資にあたっての意志決定・最終判断はお客様ご自身の裁量でお願いいたします。