ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―インデックス投資への「過剰期待」と「過小評価」(後編)

2013-07-26

 前回のコラム、『インデックス投資への「過剰期待」と「過小評価」(前編)』では、個人投資家の間でもほんの少しずつ有名になってきたインデックス投資について、メディア等が分かりやすく説明しようとするあまり、インデックス投資に対する「過剰期待」という副作用が生まれていることを指摘させていただきました。

 一方、同じ理由から、インデックス投資に対する「過小評価」も散見されます。いずれも正しい評価ではないので、列挙して実際のところを整理しておきたいと思います。

インデックス投資に対する過小評価

(1)日経平均が20年間下がりっぱなしだったのでインデックス投資はダメ

 日本という単一国だけを見て、インデックス投資全体の評価を下すのは、視野が狭すぎます。まさに、「木を見て森を見ず」です。インデックス投資は様々なアセットクラスへの国際分散投資が基本です。株式クラスにおいても、例えば、先進国・新興国を含んだMSCI ACWIなどカバレッジの広いインデックスの長期的な推移を見てみましょう。

(2)銘柄選択の努力をしないで儲けられるわけがない

 気持ち的にはよく分かります。しかし、利益の源泉は、銘柄選択だけではありません。銘柄を選択せず、逆に市場を「まるごと」購入してしまい、世界経済の長期的発展にともなう成長を取り込む、という方法もあるのです。

 むしろ、保有資産の値動きは、資産配分(アセットアロケーション)で8〜9割が決まると言われています。銘柄選択やタイミングの影響は驚くほど小さいというのが、洋の東西を問わず事実です。
出典:Determinants Of Portfolio Performance (Brinson)、ポリシー・アセットアロケーションの説明力(小松原宰明)

(3)インデックスを上回るアクティブファンドを選べばよい

 たしかに、インデックスを上回るアクティブファンドは、ある時点で見れば必ず一定数存在します。しかし、それが「継続」するかどうかは別問題であり、残念ながらほとんどの場合継続しません。

 モーニングスター社がTOPIXを上回ったアクティブファンドを調べたところ、2000年には21本あったそうです。それらを継続して調べていくと、翌年2001年にはそれは8本に、2002年には6本に、2003年には3本に、そしてとうとう2008年には0になってしまったそうです。つまり、9年連続でTOPIXを上回ったアクティブファンドは1本もありませんでした。

(4)グローバル化の進展により分散効果はなくなった

 これは2008年のリーマン・ショック後によく言われるようになっています。実際に、各アセットクラス間の相関係数は、近年高まってきているようにも見えます。

 しかし、分散効果というものは、相関係数がすべて1にならない限り(たとえ正の相関が強くても)効果はあります。これは数学的に明らかなことです。
 また、前編のコラムにも出てきたとおり、相関係数は日々変動しているので、すべてのアセットクラスの相関係数が1にとどまり続けるなどということは、実質的にありえません。

(5)「株価はランダムウォーク」なのに「期待リターンがプラス」というのは矛盾している

 インデックス投資は、株価変動は予測不能という「ランダムウォーク理論」に基づいています。これを聞いて、本当にランダムなら、上がるか下がるかは五分五分のはずだということで、「株価はランダムウォーク」なのに「期待リターンがプラス」というのは論理的に矛盾しているという批判も散見します。

 これは、理解不足、もしくはランダムウォークの定義の違いです。ランダムに動きながらも、基本的な方向性を持つことは両立します。少し難しい話になるのでここでは割愛しますが、気になる方は、「ウィーナー過程」「ドリフト項」について調べてみてください。

 以上、前回のコラムとあわせて、インデックス投資への「過剰期待」と「過小評価」を整理してみました。

 世の中にインデックス投資の情報が増えることはよいことだと思います。手間がかからず、他の投資法より比較的簡単な投資法なので、初心者向けに分かりやすくキャッチーな言葉で説明されることも多いでしょう。でも、そのキャッチーな言葉がひとり歩きして、誤解や反発を招くことがあれば、それは不幸なことです。

 もし、今回のコラムを読んで、「インデックス投資家というのは何だか上から目線でえらそうだな」と不快に思われたかたがいらっしゃいましたら、ぜひ、前回のコラムもあわせて読んでみてください。インデックス投資にポジティブな話だけでなく、ネガティブな話とセットで取り上げていることがお分かりいただけるかと思います。

 大切なのは、過剰期待でもなく過小評価でもない「正しい理解」です。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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