ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―金融機関のWEBサイトからどんどん直接要望を出そう

2013-08-23

 金融機関に要望を出したことがあるかた、どのくらいいらっしゃいますか?

 私は投信ブロガーなので、他の方の投信ブログもよくチェックしているのですが、よく、「○○証券には、○○してほしいものです。」という要望で締めくくられた記事を見かけます。同様に、Facebookやツイッターでも、「○○証券は○○対応してほしい」というような要望が投稿されているのをよく見かけます。

 それが悪いということはありません。要望があるなら、どんどん表明した方がいいと思います。

 しかし、要望の実現に向けてもっとも効果があるのは、「金融機関のWEBサイトからの直接要望」ではないかと思うのです。具体的には、金融機関のWEBサイトに設置されている、「問い合わせフォーム」もしくは「メールフォーム」に、要望を記入して送信するという行動です。

 ではなぜ、ブログやツイッターでの投稿よりも、「金融機関のWEBサイトからの直接要望」が有効なのでしょうか?

 それは、もし自分が金融機関の社員だったら、と想像すると分かりやすいでしょう。社内でなにかを新しいことを実現しようとする際には、企画書を作成すると思います。企画書ですから、「○○したい」という希望だけでなく、なぜその企画を実行した方がよいのか、根拠が求められるはずです。

 根拠には、収入、費用、時間、競合他社の動向など、いろいろな要素がありえますが、「顧客の要望」というのも重要な要素だと思います。顧客の要望状況から、利用や収入を予測することもあるでしょう。

 では、その「顧客の要望」を効果的に示すにはどんなデータを使うのがいいか? 世の中のブログやツイッターでの評判もあるでしょうが、はいて捨てるほどの無数の投稿があり、また、罵詈雑言の垂れ流しのような投稿も多数含まれるそれらの情報を、「顧客の要望」としてきちんと把握できるのか。実際問題として社員は途方にくれてしまうのではないでしょうか。リサーチ会社を使うという手もありますが、それなりのコストがかかります。

 お金も時間もない中で、早くて安くて説得力があるデータは、やはり自社の問い合わせ窓口に直接届いた声ではないでしょうか。社員としては、そのデータを使って、「こんなにお客様のニーズがあります」と企画書を書くのが自然な流れだと思います。

 ここで重要なのは、「数」です。データとしては、私たち個人投資家の要望も、有識者の一声も、100枚にわたって切々と綴られた要望書も、同じ1票に過ぎません。企画書の中で、「有名な○○氏がこう要望している」と書くよりも、「要望が10,000件届いている。これは前年比で100倍だ」と書いた方が、企画が通る可能性は高いのは明らかでしょう。

 そして、要望の「数」として確実にカウントしてもらうためには、問い合わせ窓口は「コールセンター」(電話)よりも、「WEBサイト」の方がさらによいです。

 そもそも、金融機関のコールセンターは、平日昼間しか営業していないことが多い上に、混み合っていて繋がりにくいものです。10分以上待たされて、結局繋がらないことも多々あります。これはいかにも効率が悪い。WEBサイトなら、自分が都合の良い時に1〜2分で終了です。

 また、運良く繋がったとしても、オペレーターが私たちの要望内容を正しく理解して、通話記録に残してくれるかどうかという問題もあります。電話口で一生懸命要望しても、単なるクレームとして「サービスに対するご指摘1件(対応完了)」などとサラッと処理されてしまえば、それは要望としてカウントされません。

 WEBサイトのフォームからの要望なら、こちらの要望内容がデータとして文字で残ります。明確な文章を書けばカウントされやすいでしょう。

 このようにして集まった「金融機関のWEBサイトからの直接要望」は、金融機関が行動を起こす原動力として蓄積されていきます。個人投資家ひとりひとりが、WEBサイトから気軽にどんどん直接要望を出していくことが、金融機関を動かす力になり、ひいては「金融後進国」と言われている日本の金融サービスを進歩させることに繋がると思います。

 経験者から一言アドバイスするならば、たとえ、つれない返事(「今後の参考意見として承りました」などの定型回答)が来ても、すぐに要望が実現されなくても、くさらないことです。要望が蓄積するのには時間がかかりますし、金融機関が動きだしたとしても実現までには時間がかかります。

 参考までに、過去に金融機関へ私が送ったことがある要望とその実現状況(2013年8月18日現在)の事例を列挙しておきます。なお、言うまでもなく、私ひとりの要望だけで実現したのではありません。繰り返しますが、重要なのは「数」ですから。

過去の要望例(実現状況)

■証券会社(口座を保有しているネット証券)に向けた要望

  • ・金額指定で購入できるインデックスファンドを用意してほしい(実現済み)
  • ・低コストなインデックスファンド・シリーズを取り揃えてほしい(実現済み)
  • ・株式の売買手数料だけでなく投信の販売手数料も下げてほしい(一部実現済み)
  • ・「投信定期解約サービス」をはじめてほしい (一部実現済み)
  • ・海外ETFの取り扱いをはじめてほしい (実現済み)
  • ・外国株式(海外ETF含む)を特定口座に入れられるようにしてほしい (未対応)
  • ・スマートフォンでも投信を売買できるようにしてほしい (未対応)

■運用会社(保有している投信の運用会社)に向けた要望

  • ・投信の過去の基準価額データをダウンロードできるようにしてほしい (一部実現済み)
  • ・投資家がほしい商品を直接運用会社に伝えられる場を作ってほしい (一部実現済み)
  • ・運用報告書に実質コスト(信託報酬+その他費用)を年率で掲載してほしい (未対応)
  • ・運用報告書にファンドマネージャーの過去実績と当該投信保有状況を掲載してほしい (未対応)

■金融庁に向けた要望

  • ・証券優遇税制を延長(恒久化)してほしい (却下)
  • ・日本版ISA(NISA)の非課税期間を延長(恒久化)してほしい (一部実現済み)
  • ・金融機関によるインサイダー取引を厳罰化してほしい(未対応) etc.

 様々な商品を取り扱う金融機関へのニーズは、人それぞれです。実現してほしいことがあるのに、「他の誰かが要望するだろうし、そのうち金融機関も対応してくれるだろう」などと構えていると、いつまでたってもその要望は実現されないかもしれません。

 さあ、このコラムを読み終わったら、そのまま利用している金融機関のWEBサイトを訪れ、「お問い合わせフォーム」からひとつ要望してみてはいかがでしょうか。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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