ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―リスクを「率」で見るか、「額」で見るか

2013-09-20

 投資の世界では「リスク」という言葉が、私たちが日常生活で使っている「危険」という意味と少し違っています。 投資における「リスク」とは、「リターンの変動幅」のことです。

 さて、この投資における「リスク」(=リターンの変動幅)ですが、これを「率」で見る方法と「額」で見る方法があります。

 「率」で見る方法は、確率統計でいうところの「標準偏差」であり、パーセントで表されます。

 例えば、「リスク10%」という投資商品は、1年後に、平均値から±10%以内に68.27%の確率で収まり(1標準偏差)、±20%以内に95.45%の確率で収まり(2標準偏差)、±30%以内に99.73%の確率で収まる(3標準偏差)と考えます。

 一方、「額」で見る方法は、パーセントを金額に置き換えて、円で表記されます。
例えば100万円運用していたとすると、「リスク10%」という投資商品は、1年後に最大損失額−10万円、最大利益+10万円の範囲に68.27%の確率で収まり、最大損失額−20万円、最大利益+20万円の範囲に95.45%の確率で収まり、最大損失額−30万円、最大利益+30万円の範囲に99.73%の確率で収まると考えます。

 では、リスクを「率」で見るのと、「額」で見るのと、どちらがよいでしょうか。

 リスクを「額」で見ると、自分の生活へのインパクトを実感できてよい、という考え方があります。特に、どれだけのリスクに耐えられるかという「リスク許容度」が把握しやすいようです。

 「最大で年間100万円までなら、損しても耐えられるな」とか、「お小遣いが1ヶ月5万円だから、1年で60万円までならなんとか取り返せるな」といった具合に、収入や小遣いなど自分の金銭感覚に照らして、リスク許容度を把握できます。

 実際に、投資ブログなどを拝見していると、運用資金が1,000万円を超えたら「率」で見るリスクが自分の肌感覚が合わなくなってきたというかたや、運用資金が3,000万円に達したところで「率」で見るリスクに耐えられなくなり、「額」で見て耐えられるレベルまでリスクを落とされたというかたがおられます。

 運用資産額の増加にともない、自分のリスク許容度が「率」ではなく、実は「額」で縛られていたことが分かったという例です。

 しかし、ひとくちに「最大損失額100万円」の運用といっても、運用資産1億円の最大損失100万円と、運用資産100万円の最大損失100万円では、ポートフォリオがまったく異なるはずであり、他の人や他のポートフォリオとの比較が難しくなります。

 一方、リスクを「率」で見ると、リスク許容度が運用資産額と関係なく、運用がシンプルになります。また、自分の運用を、他の投資家の運用や年金等機関投資家の運用と比較することができます。だから、資産額に関係なく他の人と話が噛み合いやすいし、その運用を参考にすることもできます。

 ちなみに、私も投資を始めた頃は、運用資産の変動幅について、「今日は牛丼○杯分儲かった」とか「○日間タダ働きするくらいの損だ」とか、リスクを自分の給料や小遣いの「額」と結びつけて考えていました。

 運用資産額が大きくなってくるにしたがって、そのあたりの感覚が、麻痺してきたのか、あるいは慣れてきたのか分かりませんが、「額」はあまり気にならなくなりました。「○%の利益だからこれは期待どおりだ」とか「○%の損失だからこれはかなり珍しい不運だろう」とか、金額にあまり関係なく淡々と「率」で考えられるようになりました。

 しかし、リスクを「率」で考える人は、個人投資家では少数派のようです。金銭感覚について、かなり「ドライな割り切り」が求められ、性格的に誰にでもできるとは言えません。

 一般的に、機関投資家などのプロは、「率」で運用資産を管理しています。でも、個人投資家にとって、「額」で見た方が自分の実感をともなって生活への影響を考えることができ、多くのかたにとって分かりやすく、間違えにくいというのなら、「額」で見るのもアリだと思います。自分は自分、他人は他人であり、必ずしも他人の運用と比べる必要はないと考えることもできます。

 つまり、「率」と「額」では一長一短であり、「率」の『利便性』と「額」の『実感』のどちらが自分にとってフィットするかを考えて、選択すればよいということです。

 「率」であれ「額」であれ、リスクを「数字」で把握することがとても重要です。リターンの標準偏差があくまで目安でしかないことを考慮に入れても、やはり数字で把握する重要性は変わりません。

「あなたは、何%までの損なら耐えられますか?」
「あなたは、何円までの損なら耐えられますか?」

 もし、どちらの質問にも答えられないとすると、もしかしたらあなたは、自分のリスク許容度を知らずに運用をしているのかもしれません。例えるなら、どれがブレーキかを知らずに高速道路を時速200kmでかっ飛ばしているような状態、あるいは、自分が飲める量を知らずに日本酒を一気飲みしているような状態かもしれません。

 たとえ今は気分が良くても、後でどうなるか分かったものではありません。お気をつけを。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

この情報は投資判断の参考としての情報提供を目的としたものであり、その正確性、安全性等について保証するものではありません。これらの情報によって生じたいかなる損害についても、本情報提供者は一切の責任を負いません。本画面、資料に掲載されている事項は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。 当該記事の内容は筆者の見解に基づくものであり、イー・アドバイザー(株)及びモーニングスター(株)の公式見解を表すものではありません。

投資にあたっての意志決定・最終判断はお客様ご自身の裁量でお願いいたします。