ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―あなたは毎年10万円以上運用会社に払っている!?

2013-10-18

 先日(2013年9月20日)のコラム「リスクを「率」で見るか、「額」で見るか」では、個人投資家がリスクを年率(パーセント)で把握するのがよいのか、金額(円)で把握するのがよいのかについて、比較をしました。

 結論としては、どちらも一長一短なので、結局ご自身がしっくりくるやり方を採用すべきというのが先日のコラムの結論でした。すると、読者の方々から、「リスクを実感できるから、私は金額で把握すべき」という声をたくさんいただきました。

 これは、「年間最大損失30%」と言われてもピンと来ない人でも、「年間最大損失300万円」と言われると「そんなのとても無理無理!」と実感できるということです。

 どちらがよいのかは、ここでどちらが優れているということをあらためて検証することはいたしません。ただ、リスクを金額で把握する方がしっくりくるという方には、ひとつ提案があります。

 ぜひ、「リスク」だけでなく「コスト」についても金額で把握してみてください。これはどういうことなのか?今回のコラムで説明したいと思います。

運用資産が1000万円を超えても、信託報酬1%は安いと言える?

 日本の投資信託の平均信託報酬は、年率1.5%(2012年末・モーニングスター調べ)です。

 一般に、「コストが安い」と言えるかどうかの目安になっているのが、アクティブファンドで年率1%程度と言われています。先ほどの平均信託報酬が年率1.5%であることもあわせて考えれば、年率1%程度は「まあまあ安い」と感じる投資家も多いようです。

 一方、運用会社側からは、あまりに安い信託報酬では運用会社の経営が成り立たず、運用会社・投資家が共倒れになってしまうといった懸念も聞こえてきます。

 以前、某ネット証券系の信託報酬年率1%のバランスファンドについて、その設計に携わった方が、「信託報酬年率1%でも運用会社としてはギリギリ」「やみくもにコストを下げても、会社としての経営が成り立たなければ最終的には運用が継続できなくなってしまい、投資家にとってもデメリット」ということを語っていました。

 投資家も運用会社も、信託報酬は年率1%でギリギリ。本当にそうでしょうか?私はちょっと違う感覚を持っています。

 投資を開始したばかりで、資産額が10万円とか100万円くらいのうちは、その感覚でもあまり問題にならないかもしれません。しかし、資産額1000万円を超えてきても、果たして同じことが言えるでしょうか。

 たとえば、1000万円分の投資信託の信託報酬が年率1%だった場合、運用会社に払う金額は年間10万円です。年間10万円、ということは2年間投資していたら20万円、5年間で50万円、10年間で100万円です(当たり前ですが)。

 「信託報酬年率1%」というとまあまあ安いと感じるかもしれませんが、1000万円投資しているあなたは、運用会社に「毎年10万円を払っている」ことになります。運用をお願いする対価として、また、セミナー等の情報提供の対価として、毎年10万円を払い続ける価値があると考えられるかどうか?いかがでしょうか。

他の投資家の運用コストはどのくらい?

 日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の平成24年度業務概況書によると、年間の運用コスト(個人向け投資信託の信託報酬等にあたる)は、年率0.02%だったとのことです。年率0.02%というと、私たちが安いと思っている年率1%の、実に50分の1です。

 とはいえ、世界最大級の機関投資家であるGPIFの運用コストと個人投資家の運用コストを並列で比較するのは、さすがに無茶かもしれません。個人投資家で比べたいところです。

 たとえば、米国の例ですが、米国バンガード社では、個人投資家が購入できるアクティブファンドの平均エクスペンス・レシオ(日本の投資信託の信託報酬等にあたる)が年率0.33%です。インデックスファンドも含めると、0.25%です(注)。

 日米で資産規模が違うとはいえ、日本の運用会社が、個人向けの投資信託の信託報酬について、年率1%で「もうギリギリ」と言うのは、もしかしたら「あきらめるのが早すぎ」ではないでしょうか。

自分のモノサシで考えてみよう

 私自身の保有資産のことをお話します。私が自分のポートフォリオのメインに据えている金融商品(海外ETF)の信託報酬の加重平均は、年率0.22%です。

 これは、1000万円を運用していたら、運用会社に払う金額が毎年2万2千円になるということです。個人的には、もっと安いに越したことはありませんが、まあ許容範囲内と感じます。

 ちなみに、モノサシを「金額」ではなく「年率」に変えてみても、答えは一緒です。

 私のポートフォリオの期待リターンは、年率で+4.6%に過ぎません。そこから信託報酬で年率1.0%が引かれるということは、期待リターンの実に「2割」を毎年自動的に失う計算になります。期待リターンを1%引き上げるために、どれだけのリスクを取らなければいけないのかを計算すると、これはいかにもダメージが大きすぎると感じます。

 データにおいても、運用している実感においても、信託報酬年率1%を「まあまあ安い」とはとても思えません。少なくとも、米国と同じ水準になるまでは、運用会社にコストの低減を求めていきたいと思います。

 もちろん、投資において、コストさえ安ければ確実に儲かるというわけではありません。しかし、不確実なリターンに対して、コストは確実にパフォーマンスを引き下げます。自分が毎年運用会社に払っている報酬が、納得できるレベルなのかどうか、ぜひ一度、「金額」で「実感」してみることをおすすめします。

(注)「Morningstar Direct」よりモーニングスターが算出
※1 バンガードの米国籍オープンエンドファンド(MMF、ファンド・オブ・ファンズ、機関投資家向けシェアを除く)のうち、エクスペンス・レシオが更新済みのファンドを集計対象とした
※2 エクスペンス・レシオは単純平均で算出
※3 算出の際に用いたエクスペンス・レシオ(運用報告書ベース)は2012年の実績

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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