ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―やり手投資銀行家が亡くなる前にどうしても伝えたかったこと

2013-12-13

 「CTスキャンの結果が出た。別の腫瘍が見つかったよ。あと半年の命らしい」

 というショッキングな出だしで始まるのは、「投資とお金について最後に伝えたかったこと」(ダニエル・C・ゴールディ、ゴードン・S・マレー共著)という本です。

 実際に、脳腫瘍で余命いくばくもないやり手投資銀行家ゴードン氏(ゴールドマン・サックス、リーマン・ブラザーズ、クレディ・スイス等で活躍)が、どうしても伝えたかった「投資とお金」の知恵をまとめたというものです。執筆後、刊行直前に著者は亡くなり、この本は遺作となりました。

 投資銀行というのは、M&A(企業の合併や買収)の仲介や証券流通市場でのトレーディング等によって利益を得ることを主な業務とする銀行です。時に社員の巨額の報酬が話題になったりします。

 その投資銀行家が、自分が亡くなる前にどうしても伝えたかったことというのですから、「さぞかし高度で複雑な秘訣なのだろうな」と思われるかたもいらっしゃると思います。私もそう思いました。どのような内容だったかというと……

 「バランスの良いポートフォリオで広範な分散化投資という手法を用いれば、グローバル資本市場の平均収益率が誰でも達成できる」
 「主観的な予測や銘柄選択や売買タイミングに悩む必要はない」

 どこかで聞いたことがあるフレーズではないですか!

 驚いたことに、ウォール街で25年間活躍した辣腕投資銀行家が、亡くなる前にどうしても伝えたかったのは、「インデックス投資」そのものでした。逆に、亡くなる前だからこそ書けたのかもしれません。

 なぜなら、インデックス投資は、極論すれば、平均株価や平均債券価格など(インデックス)に連動するインデックスファンドを買ってそのまま持っているだけの、ごくシンプルな投資法です。ウォール街の投資銀行の投資手法(バリバリのアクティブ運用)とは正反対の投資手法ですから。

 あまりにもシンプルで簡単なため、しばしば「思考停止」「アホールド」などと揶揄されます。

 しかしながら、実際は、プロのファンドマネージャーが銘柄選択と売買タイミングを図って運用する「アクティブファンド」のうち、7〜8割はインデックスを下回るパフォーマンスしか出せません。このデータは古今東西を問わずに観測されています。

 その原因は、アクティブファンドの割高な運用コストのためとか、市場がプロばかりでお互いに相手を出し抜くことが難しくなっているためなど、諸説ありますが、いずれにしてもプロのファンドマネージャーにとって、インデックスというのは、なかなか上回ることができない難敵なのです。

 アクティブ運用で突出したパフォーマンスを叩き出し、毎年、世界長者番付に名を連ねる米国随一の投資家ウォーレン・バフェット氏でさえ、「ほとんどの投資家にとって、株を保有する最善の方法は、手数料の低いインデックスファンドに投資することである」と言っています。

 そう考えれば、冒頭のやり手投資銀行家ゴードン氏が、自分が亡くなる前にどうしても伝えたかったことが、ごくシンプルなインデックス投資であったとしても、不思議はありません。

 私もブロガーとして、自分が実践しているインデックス投資を世の中に紹介しています。インデックス投資は、最も儲かる投資法でもなければ、必ず儲かる投資法でもありません。しかし、「手間がかからない」ことにかけては、右に出るものはない投資法です。だから、仕事が趣味でも仕事でもない、私たち普通の人に向いている投資法だと考えています。

 もし自分が亡くなる前に「投資家に何か伝えたいことはあるか?」と聞かれたら、こう答えると思います。

 「お金はインデックス投資でほったらかして、空いた時間で人生を楽しもう!」

※インデックス投資の具体的手法が知りたいかたは、こちらの記事にまとめてあります。ご興味があればどうぞ。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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