ブロガー水瀬ケンイチの等身大投資コラム―単純に「非課税だから有利」ではない、NISAの「キモ」

2013-12-27

 いよいよ2014年1月から少額投資非課税制度=NISA(ニーサ)がはじまりますので、NISAについてまとめておこうと思います。

 実は、今までNISAについてのまとめ記事を書くことを、意識的に避けてきました。なぜなら、金融庁の制度だけは明らかになっていましたが、各金融機関がどこまで対応するかは、実際確認しても「未定」と言われる事項が多すぎたからです。

 この時期になり、ようやく細かい部分の未定事項が明らかになってきたので、個人投資家として、どうするべきかを判断できる状況になってきたと思います。ですので、この記事を書くことにしました。

ポイント1 まずはNISA制度の原典を押さえる

 NISAについて、ブログ読者の方々からたくさんの質問・相談メールをいただいています。残念ながら、大半が金融庁や各金融機関で公開されている情報を読めば分かる内容というのが実態です。

 なにか新しいことをはじめようという時には、まず基本を押さえること。これは投資にかぎらず、すべてのことに共通することです。しがない個人ブログに助けを求める前に、まず公開されている一次情報(原典)にあたりましょう。

 NISA情報の原典は、金融庁の公式サイトです。まずそれ(およびそこからリンクされている政府広報)を熟読することです。

金融庁 WEBサイト
NISA(少額投資非課税制度)がいよいよ始まります!

◆NISAの概要(上記サイトより抜粋)
制度対象者:20歳以上の日本国内居住者
非課税対象:上場株式・公募株式投資信託などの配当や譲渡益
非課税投資枠:新規投資額で年間100万円が上限(最大500万円)
非課税期間:最長5年間 ※期間終了後、新たな非課税枠への移行による継続保有が可能
投資可能期間:平成26年〜平成35年(10年間)
口座開設数:1人につき1口座

 特に、上記サイトからリンクされている、政府広報オンラインのNISA情報『新しい投資優遇制度「NISA(ニーサ)」がいよいよスタート!将来に向けた資産形成を考えるきっかけに』が過不足なくよくまとまっているのでオススメです。

 ちなみに、上記サイトをしっかり読めば、うちのブログに寄せられているほとんどの質問はなくなるはずです。

ポイント2 NISAの特性を大胆に整理する

 ポイント1で紹介したリンク先の情報、しっかり読んでくれましたか? 読んでくれたものと仮定して、話を進めます。

 金融庁(と政府広報)の情報は、よくまとまっているとはいえ、「モレなくダブリなく」なのでたくさんの情報が出てきて、消化不良に陥ってしまうかたもいらっしゃるかもしれません。ここでは、細々とした制度をすべて踏まえた上で、ここでNISAの特性を大胆に整理したいと思います。

(1) NISAは儲けた人が得をする非課税制度
(2) ただし、損した人は「泣きっ面に蜂」な厳しい制度

 あちこちで「非課税」を前面に押し良いことばかり書かれているので、NISAは、誰にとってもお得な嬉しい制度で、使わなければ損だという「イメージ」を持つかたがいらっしゃるかもしれません。また、そういうイメージを利用して販売促進をしている金融機関も多いことでしょう。

 しかし、制度をしっかり理解すると分かることは、(1) NISAは儲けた人が得をする非課税制度であると同時に、(2) ただし、損した人は「泣きっ面に蜂」な厳しい制度でもあるということです。

 (1)は分かりやすいメリットです。毎年100万円を上限とする新規購入分を対象に、その配当や譲渡益を最長5年間、非課税にしてくれるというものです。

 問題は(2)です。NISA口座の中の資産は、他の口座(既存の特定口座や一般口座の株式や投信)との損益通算・損失の繰越控除不可なのです。通常の特定口座や一般口座にある、「損した時の税制ケア」が一切ありません。

 また、NISA口座の保有資産の非課税期間が終了した時、儲かった時はハッピーで、そのまま特定口座や一般口座へ「時価」で払いだされます。しかし、損してる場合は、買った時より低い「時価」に取得価格が上書きされてしまうことになります。これは要するに、実際は損してるのに、将来の税金が増えてしまうという悲しい結末です。

※諸悪の根源は、非課税期間が最長5年間(一部ロールオーバー可能)と制限されているからです。NISAのお手本にした英国のISAでは、非課税期間は恒久化されており、このような問題はありません。

 つまり、現状のNISA口座は、儲かる方向にも、損する方向にも、ブースト(加速)がかかるということであり、投資家にとって一定の覚悟を求められる制度になっているということです。

ポイント3 自分の投資法にどう活用できるかを考える

 私はインデックス投資を中心に情報発信していますが、世の中にはいろいろな投資法があります。また、いろいろな金融商品があります。前述のポイント1と2を考慮に入れて、自分の投資法にNISAをどう活用できるかを考えてください。

 大切なのは、「NISAを最大限活用するため」ではなく、「自分の投資法にどう活用できるか」です。

 ここを間違えているかたが多数いらっしゃいます。「NISAにいちばん向いた投資法(商品)は何でしょうか?」という質問メールが何十通も寄せられているし、マネー誌等の取材でも「NISAのオススメ商品は何ですか?」という質問から逃れることができません。

 「私の場合はこうする」というお話はできても、すべての投資家にフィットしたNISA向けオススメ投資法(商品)などないので、いきおい質問者をガッカリさせることになります。

 しかしながら、ポイント2で書いたように、NISAは現状、儲かる方向にも損する方向にも、ブーストがかかる制度になっています。NISAのメリットを最大限に享受するためには、必ず儲かっていることが最重要です。

 NISAのオススメ投資法を教えてくれという質問は、ある時期(5年後など)に必ず儲かっている投資法を教えてくれという質問と、最終的には同義となってしまう構造にあります。

 個人的見解で身も蓋もない現実を述べさせてもらうと、株や債券等のリスク性資産への投資について、そんな都合のよい投資法はありません。

 したがって、NISAにフィットした投資法や商品を模索するのではなく、今、自分がやっている投資法において、NISAをどう活用できるかを考えることが有意義だと思います。

 その意味で、特に、「NISAをキッカケに投資をはじめてみよう」という初心者は、NISAのオススメ投資法の前に、自分に合った投資法の確立が先です。話の順番を間違えないようにしてほしいと願います。

 上記3つのポイント以外にも、分配金が少ないファンドがよい(なるべく非課税枠を消費しないようにするため)、期待リターンが高いアセットに集中投資するものではなく広く分散したファンドがよい(5年後の一時的損失確率を少しでも下げるため)といったコツはありますが、枝葉の各論であり、考え方の「キモ」にあたるものは「自分の運用方法に役に立つかどうか」です。

 さて、今まで33回にわたってお送りしてきた本コラムも、今回が最終回となります。記事を提供している「イーアドバイザー」のコンテンツの中でも、トップのアクセス数をいただいていたとのことで、お別れは名残惜しいですが、ここでひと区切りとさせていただきます。今まで書いてきたコラムのうち、どれかひとつでも何かのお役に立ったのであれば幸甚です。またどこかでお会いしましょう。

水瀬ケンイチ
1973年東京都生まれ。都内IT企業勤務。
インデックス投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を執筆、人気を博す。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『ほったらかし投資術インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)。 
(写真はTwitter @minasekのアイコン)

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